「ここにもあったよ! ふるさと上鷺宮の万葉花だより(栃編)」No.39

 今回は上鷺宮3丁目の道に、その名が付いている植物を取り上げてみました。
それは「栃」。上鷺宮区民活動センター(上鷺3丁目)の前の150m位の通りを「トキの木通り」と名付けられ、道路の北側に栃の木が街路樹として14.5本植えられています。また「トチの木公園」も、その道に隣接。桜通り、アカシア通りと並んで上鷺宮地区としては代表の植物と言ってもいいでしょう。

この栃の木は5月~6月頃に左のような花が咲き、秋にクルミに似た実が実り、皮の中には栗のような実があります。栃の木は落葉広葉樹で巨木になり、かつては臼等に使われた、とのこと。実はデンプンや蛋白質を多く含み、アク抜きして食用になるほどです。縄文時代の遺跡からも出土しているので日本の風土に根付いている植物です。昔は飢饉などの際に食料として重宝され、一部の藩では伐採が禁じられたこともあったようです。現代では東国地方等の土産として栃餅等として息づいています。あまり目立ちませんが、この栃の木は街路樹として一部の地域で植えられています。パリではマロニエとも呼ばれ街路樹として名物になっています。児童文学として、絵本としても有名な「モチモチの木」はこの栃の木だそうです。

さて栃に関して古典、和歌等があるか…と探してみたのですが、ほとんどありませんでした。貴重な蛋白源となっていた植物にしては意外でした。
今回は3句を紹介してご勘弁を。

 栃の実や 幾日転げて ふもとまで    小林一茶
 栃老いて あるほどの 実をこぼしけり   前田普羅
 栃の実の たわわな町に 着任す    野口ゆたか 

【文・写真 戸引】