「ここにもあったよ! ふるさと上鷺宮の花だより(鬼灯編)」No.54

 鬼灯(ほおずき)が、いつ日本に伝わったのか調べてみたが最も古い記述が日本最古の書物「古事記」であるという。よく知られているヤマタノオロチの目の赤さを表す喩えとして「鬼灯」を用いている、と。この鬼灯はアカカガチ(カガチ=輝血)と書かれているそうである。奈良時代には国内に広がっていたのであろう。さらに平安時代には「本草和名」という日本現存最古の薬物辞典にも登場しているという。そこでは「鬼灯」が酸漿の名で出ているようで薬草として使われていた。観賞用には毒性があり漢方では咳止め、解熱、利尿、冷え性、鎮静…と。鬼灯の根を乾燥させ生薬となっている。昔は農家や民家の庭先に植えられるほど生活に密着していた。私も子供のころに丹波鬼灯(今、お盆のころに花屋の店先に出回るミニトマト大の赤い鬼灯)や千成鬼灯(丹波鬼灯の1/3位の小さい緑色の沢山なる鬼灯)が庭に植えられていた。よく祖母が丹波鬼灯の熟れた実を指で柔らかくし、中身の種を小さな穴から出した鬼灯を口の中に入れてキュッキュッと鳴らしてくれた情景が懐かしく思い出される。この鬼灯には食用になるものと観賞用と2種類ある。全く種類が違うという。ヨーロッパでは食用。日本では観賞用として知られている。この鬼灯も江戸時代になると観賞用として庶民に根付く。しかし昨今、東北地方で鬼灯が食用として特産になっているようである。「ストロベリートマト」栄養価も高くサラダ、ジャム、生食でも親しまれているという。

鬼灯で一番身近に感じられる時期がお盆。この頃、花屋の店先には仏前に…観賞用に…鉢植えに…さらに花瓶用に挿せる1本で…鬼灯が賑やかに並べられる。お盆の頃に鬼灯とは如何に…それはお盆の灯りが灯った様子が鬼灯に似ているからとも言われている。さらに、外側のガクが身を包み込む鬼灯の形も仏壇に供えられる所以に。それはガクの空洞に実が包まれる形状。精霊は空洞に宿る、という古来からの伝承もあり、お盆と結びついた、とも言われている。

7月に江戸時代から続く浅草寺のほおずき市の賑わいが毎年ニュースで取り上げられる。それほど今も昔も庶民に息づいている鬼灯たる所以なのかもしれない。

紅鬼灯を ふふめる吾子は幼ければ 凛々として 我は生きねばならぬ   木俣 修

鬼灯の 実はふっくらと 涼包み      白桂

鬼灯を 含みて 鳴らす 昭和の音     中山泰山

鬼灯は 実も葉もからも 紅葉かな     松尾芭蕉

鬼灯は 暮れてなほ朱の たしかなり    及川 貞

【戸引】