春は名のみの早春に、どこからともなく心地よい香りを漂わせ、思わず沈丁花を探そうと足を止めさせる、春を告げる花でもある。
中国が原産で日本では室町時代頃には栽培されていた、という。「じんちょうげ」「ちんちょうげ」ともいう。沈丁花という名は香木(心地よい香りの木材の白檀等が有名)の一種、沈香のような香りと丁子に似た花を付けることから名付けられた。また日本三大香木(沈丁花、クチナシ、金木犀)にも挙げられている。花の煎じ汁は歯痛、口内炎等の民間薬として使われたという。
未だは咲かぬ 葉隠れの くれない蕾 匂ひこぼるる 若山牧水
陽脚延び 風まだ寒し 夕暮れに 沈丁花の香 淡く漂う
【戸引】