いつの季節でも花屋の店頭に並ぶ花の中で、一輪で最も存在感があるのはボタンでしょう。切り花でも良し。鉢植えでも良し。季節は今頃の初夏(冬に咲く寒牡丹もありますが)。町内でも鉢植えの牡丹をよく見かけます。種類も色も実に様々。鉢植えで手に入れ1.2年は良く咲くのですが、次第に貧弱になってきて…無精な私には育てるのが難しかったですね。
 牡丹の別名は「富貴花」「百花王」「花王」「花神」「深見草」……驚くほど大層な名前がついています。原産は中国。元来は漢方として用いられていたようです。根の樹皮部分が漢方薬とし用いられて、薬効は消炎、止血、鎮痛に効くと言われています。
 かつては種からも育てられましたが開花まで時間がかかり過ぎ、手に入りにくかったようです。
しかし今は芍薬の株に接ぎ木をすることで急速に一般に広がっていったようです。

 日本へは奈良時代あたりから渡来したようですが薬草としてでした。どうも観賞用に栽培されてきたのが平安時代からのようです。故に相前後して文学作品に登場したのが枕草子で「ほうたん」の記載があると。万葉集には詠われていないようです。清少納言、紫式部もさして興味を示していなかったとのこと。密やかな花、淡い色合いの花が好まれた時代。まだまだ豪華なたたずまいの牡丹の認知度は当時の貴族などの感性から違和感を持ち、低かったのかもしれません。庶民にもてはやされてきたのは大衆文化が開花した江戸時代からで三百種以上も栽培されたようです。
 古人(いにしえびと)は美しい女性の立ち居振る舞いを花に譬(たと)えました。「立てば芍薬 座れば牡丹 歩く姿は百合の花」これも江戸時代の美しき女性に対する思いでしょうか。何と優雅な時代だったことか。

牡丹花は 咲き定まりて静かなり 花の占めたる 位置の確かさ  木下利玄

牡丹散って うち重なりぬ 二三片   与謝蕪村

白牡丹と いふ(言う)といへども 紅(こう)ほのか 高浜虚子

 

【文・写真】戸引 一博