実は柳は古来より初春にふさわしい植物とも言われています。柳は春になると落葉樹の中で、いち早く一斉に芽吹くことから生命力の象徴とみなされ、邪気を払う呪力を持つ植物と言われていました。実は私も芽吹き始めるこの時期のしだれ柳が大好きです。しかも一瞬の間です。2月中旬位でしょうか。その様子を表しているのが下の写真。細い糸状に垂れる枝に突然、若葉色の細かな点が煙るように噴き出してきます。その若葉色の煙が優しく枝を包む。この刹那がたまらなく好きです。「お、春!」。あまりにも早い変化なので見逃すことが多いですね。それが数日で小さな葉の形に成長していくのです。下の写真はもう既に小さな葉が見え始めます。上の写真は2月末から3月にかけて。あとは秋の落葉まで青々と茂ります。
 多くの場所で植えられています。上鷺宮では東公園内に見ることができます。歌にも歌われた銀座の柳。柳は街路樹、公園樹として…さらには江戸時代に川堤に(根を張らせ堤防を強くする意図も)…これは幽霊が出る場所の定番として…水辺でもよく目にします。
中国原産で奈良時代に渡来したらしいです。中国では「矢」に使われ「矢の木」から「やなぎ」に転じたともいわれています。

 柳に風、柳の下にどじょう、柳腰(腰が柳のように細くしなやかな細身の美人の事)、 柳行李(昔、柳の皮をはぎ右の写真のように編んで箱状にして物を入れる)、柳刃包丁、柳川鍋、柳の枝に雪折れなし、柳眉を逆立てる(柳のように美しい眉を持った美女が眉を逆立てて怒る様)…この様に柳にまつわるいくつもの語句、ことわざなどがある柳。それほど当時は生活に密着していたのでしょう。

 先ずは有名な和歌、短歌をご紹介します。

「やはらかに 柳あをめる 北上の 岸辺目に見ゆ 泣けと如くに」 石川啄木
現代訳(今の故郷は早春を迎え、北上の岸辺に柔らかな若葉色に柳を染め上げられている柳の木々が見に見えるようです。望郷の思いを強くもち、思い切り泣け!、というように)

「あさみどり 染めかけたると 見るまでは 春の柳は 芽(も)えにけるかも」万葉集
現代訳(まるで浅緑に染め上げたように、今、春の柳が芽吹いています)

   そうそう。まな板や箸、爪楊枝にも柳の材質が使われた物もあります。今でも身近な所に使われているのですね。

 【文・写真】戸引 一博