南天の実と花

 いよいよあと二週間余りで2019年の新年を迎えます。今回も新年に向けておめでたい植物を…と思い南天をテーマにしようと思いました。門松にも、正月を飾る生花の中にも真っ赤な硬い小さな南天の実は必要とされます。
なぜでしょう。赤い実の付いた南天は正月の縁起物の植物として重宝されています。「(南天)難を転じて福となす」「悪魔降伏の木」「不浄、汚れを払う木」とされてきました。
 この様に縁起の良い植物ならば、昔から様々な和歌を含めた資料があり楽しめるのか…と思っていましたが予想に反しました。万葉集他古典の文学には載っていませんでした。枕草子、源氏物語などにも…調べた範囲では藤原定家の物に出ていると…不思議です。どうやら縁起物という捉え方は江戸時代からのようです。
 南天に関して思い出してみました。そうそう。我が家にも植えられています。祖父母の代からですから、かれこれ80年近くは経っているでしょうか。子どもの頃には雪が降ると雪でウサギを作り目に南天の実を嵌めました。また、昔、赤飯の上には南天の葉が置かれていたのを記憶しています。調べていくと昔の人の知恵に感心しました。何と南天の葉には防腐効果があるというのです。葉のナンニジンという成分が赤飯の熱と水分に反応してチアン水素を発生させるから…と。さらには南天のど飴でも知られているように実を乾燥させると殺菌効果と咳止めに有効だと、さらには健胃、解熱、鎮咳…へえ!南天は生薬としても厄除けにもなる。大変有意義な植物だったのですね。驚きました。あと、南天の箸も……確か、ありましたよね。
 さて、「南天」を詠み込んだ和歌では見つかりませんでした。今回は俳句のみとさせていただきます。ご了承ください。

門松に 実ぎっしりの 実南天   山口誓子
南天の 実こぼしたる 目白かな  正岡子規
南天の 赤き実偲ぶ  雪うさぎ  未詳

 冬枯れの中でこれだけ赤く実がびっしりと付くインパクトが充分の南天。縁起物で薬効もあり言うことなしの植物が古典文学に足跡を残していない不思議。理由はわかりません。
 何か今回、触れていない情報がありましたらお教え下さい。

 ただ、正月にはふさわしい南天だと思っています。

【文・写真】戸引 一博