fuji1上鷺宮三丁目     .fuji2

今回は「藤の花」をテーマにしました。そこで気づいたのは「藤」に関する姓の何と多いことか。藤原、藤島、藤田、藤波、藤塚、藤本、藤城、藤谷、佐藤、加藤、後藤、近藤………まだまだ数限りなく上げることができるでしょう。「藤」の付く姓は藤原氏に流れを汲むものも多いと聞きます。また日本の姓に関して「藤」以外でも植物の名が多く用いられていることが驚きです。さらに言えば自然界、神羅万象を姓にする国民性。私はとても素敵なことだと思います。詳しくは知りませんが、世界中でこれほど氏名に花や自然界の存在を用いる国はないでしょう。自然を友とし畏敬の念を持ってきた証でしょう。

この「藤の花」は4月下旬から5月上旬に咲く花です。町内でも庭先、公園で多く見られます。上鷺東公園にも藤棚がありますね。このように身近に見られる花です。左の「藤」の写真の隣に載せたのは家紋です。それほど「藤」が、植物等が、家紋になっているのですね。私はかつて家紋が好きで資料を集めたことがありました。日本には何万種類もあるそうです。上の家紋は「藤」をデザイン化した古来からの家紋です。「九条氏の下り藤」と言われています。「藤」に関する家紋は調べてみると、たくさんありすぎて数えきれません。家紋は飛鳥時代にさかのぼれるそうですが、平安時代に確立され、鎌倉、室町、戦国時代にさらに洗練されてその数を増していったようです。其の中で「藤」に関する家紋は日本の十大家紋とされ代表的な存在です。ご自分の家紋を確認して調べてみるのも楽しいですよ。また、平安時代には『藤色=紫』は高貴な色とされました。さらに古来は花房が垂れ下がって咲く花に、稲穂のような豊穣を連想させる神聖さを重ね合わせたようです。

さて話を戻しましょう。「藤」は北アメリカ、東アジア、日本に自生しているとのこと。元来、「藤」は山林に繁茂し蔓で木々に絡みつき木を傷め、山を荒らすくらい繁殖力の強い植物と言われます。ただ蔓は籠等の日用品に、昔は弓の一部に使用されるほど生活に密着していました。やはり、この「藤」は古典文学にもしっかりと登場しています。そこで万葉集と枕草子をご紹介します。

《万葉集》 恋しけば 形見にせむと 我が宿に 植ゑし「藤波」 今、咲きにけり  山辺赤人
《現代訳》あなた様をあまりにも恋しく思うあまり、あなた様の思い出にしようと、私の家の庭に植えた藤の花が今、真っ盛りに咲いていることです。あなた様………

《枕草子》[1]木の花は濃きも薄きも紅梅、(中略)「藤の花」は、しなひ長く色濃く咲きたる、いとめでたし。   清少納言  35段
《現代訳》[1]木の花でいえば、色が濃くても薄くても紅梅が素晴らしい。「藤の花」は花房が長く、しなやかに垂れ下がって色濃く咲いているのが、とても素晴らしい。

《枕草子》[2]あてなるもの (中略)削り氷(ひ)に甘葛(あまずら)入れて、新しき椀に入れたる 水晶の数珠 「藤の花」(中略)    清少納言  39段
《現代訳》[2]上品に感じるものを上げると、かき氷に甘い植物から採った汁を入れて、新しい銀製の器に入れたもの。水晶製の数珠、「藤の花」 (中略)。

 ご存じのように藤の花の色は紫と白があります。桜のあとに晩春を飾る代表的な花。風になびく藤色の花房を探しに歩いてみてはいかがでしょうか。

【文・写真】 戸引 一博