katakuri1 3月に咲くこの花を見たことのある方は決して多くないと思います。この2枚の写真が「かたくりの花」。上鷺宮1丁目の、とある庭に毎年、咲きます。万葉集では「かたかごの花」と呼ばれていました。野の花では私の大好きな花の一つです。

もう、長いこと「かたくり」というと「片栗粉」をまず、思い浮かべるのがあたりまえです。今の片栗粉はジャガイモのでんぷんが材料になっているようです。実は「かたくり」はユリ科で小さな球根です。大昔はこの球根を乾燥させ粉末状にして料理に使っていました。当然、「かたくり」の大群落が日本中に広がっていなければ、食材の片栗粉等はあり得ません。この可愛い花は今では山奥の山野でしか見られなくなりました。自生する群落は絶滅危惧種状態でしょう。私が初めて「かたくり」の大群落を目にして感動の声を上げたのは、今から30数年前のことです。神奈川県津久井の山奥。広い雑木林の斜面に絨毯のように広がっていました。今、確実に目にできるのは大きな園芸店で一芽800円ほどで売っています。しかしそれを目にするたびに、いったいどこから採取したものか…その背景には大規模な「かたくり」の群落破壊があるのではないか…と、不安で複雑な思いになります。もう、山に入って「かたくり」に出会うことはほとんどなくなりました。日本固有のヤマユリも同様です。寂しき限りです。

katakuri2 実はかたくりの花は小さくて3~4cm前後。しかもミニシクラメンのように花が下を向いて咲きます。上から見るよりも下から見上げると花の可憐さが際立ちます。晴れの日の午前中が一番の見ごろで花弁が錨のように反ります。夕方になると閉じる。見頃もせいぜい3日位ではないでしょうか。ひっそりと咲き、程なく消えてしまう花です。開花時期は3月の中旬前後になるでしょう。上鷺宮地域の近くで確実にみられるのはS園芸の商品と練馬区の光が丘公園の西方の笹目通を越えて600m近くにある「清水山憩いの森」に「かたくり」の群落が保存されています。時々、テレビのニュースで紹介されますよ。万葉集には「かたくりの花」を詠み込んだ和歌があります。

 もものふの 八十(やそ)をとめらが 汲みまがふ 寺井の上の かたかごの花    大伴家持
巻19-4143

 現代語訳(大勢の若い娘たちがやってきて入り乱れるようにして水を汲んでいる。寺の井戸の傍らに咲く「かたくりの花」の、娘たちと同じように何と美しいことよ。)
[注]「もののふ」は「八十」の枕詞だそうです。

初春の 蝶の舞ひゆく 森かげに さやかに咲ける かたくりの花        高橋達明

 この春は、もしご興味があれば「清水山憩いの森」で「かたくり」をご覧になっては如何ですか?実際に目にするより、上の写真の方が印象が強いと思います……それほど小さく密やかな花です。開花時期が年によって異なりますので3月になったら前もって練馬区に聞くことをお勧めです。

【文・写真】 戸引 一博