ajisai1上鷺宮一丁目にて

 紫陽花はどこにでも咲いている梅雨から初夏にかけてのまさに代表格の花。ajisai2今では洋の東西を問わずに様々な種類の紫陽花が花屋の店先に並んでいますが原種は日本原産のガクアジサイといわれています。もちろん町内を歩けばどこでも目につきます。紫陽花の開花の頃は常にニュースでよく取り上げられますね。食べるのが好きな私は和菓子の「紫陽花」も併せて思い浮かべますが……

 紫陽花は梅雨によく似あいますね。そぼ降る雨の中でこそ、青色に、桃色、白色に……と一層、輝きと鮮やかさを増す、味わい深き花です。

 実は花弁のように見える部分はガクが大きくなった装飾花のようです。紫陽花の発色は土壌の酸度で決まるそうで、土壌が酸性ならば青色に…アルカリ性ならば桃色に…花言葉の一つに移り気という紫陽花としてはありがたくないものがありますが、実は元は何もない大地の色に染まる繊細な植物なのですね。そう思うと健気な花に思えてきます。

 現代では多くの人に愛でられる紫陽花の花。しかし万葉集にはたったの二首、平安時代末までは和歌に登場していません。源氏物語、枕草子にも載っていないようです。何故なのでしょう。移ろいやすい花の色。つまり紫陽花の開花から時が過ぎるにつれ花の色を変えていくのを、当時の人は不実と考えられた、という説もあります。1790年にはイギリスに渡り品種改良がなされ、今、花店に並ぶ多くの紫陽花は逆輸入の品種が多いようです。

 平安末にはやっと名歌が顔を出し始めます。これを調べていると、わかりやすく情景描写の美しい作品がありました。

あぢさゐの 下葉にすだく 蛍をば 四ひらの数の 添ふかとぞ見る
               藤原定家の歌です。(拾遺愚草 上巻より)

(現代語訳)
「紫陽花の花は夕暮れに溶け始めると、その花と入れ替わるように多くの蛍が飛び交い始め、いつの間にか薄暗い紫陽花の下葉に蛍が光を発しながらたくさん集まってきた。何とその様子が紫陽花に四つの花が増えたかのように見えている。」

hotaru「蛍」ネットより

 なにか日本画の淡く繊細で多彩な色の描写と、精緻な筆使いを見ているかのような錯覚に陥ります。何気なく見ている紫陽花の花に世界に広がっていった歴史の流れ、日本人の精神史、和歌に美しく詠み込まれた文学性……今回、いろいろと調べてみて、今年は今までとは違う紫陽花に出会えそうです。

 個人的に紫陽花は鎌倉で出会うのがたまらなく好きです。浄智寺、東慶寺、寿福寺、長谷寺《有名なアジサイ寺(明月院)は混雑することと、青色の紫陽花が圧倒的なので好みではなく脚を向けていません》……あたりでしょうか。

 貴重な歴史、自然が残り、四季の花々が彩を添える古都北鎌倉、鎌倉へ今年は足を向けてはいかがでしょうか……

 【文・写真】 戸引 一博