初春のお慶びを申し上げます。本年もよろしくお願い申し上げます。

昨年のこのコーナーでは新年を迎える年中行事の意味と「藪柑子」を紹介しましたが、今年は「春の七草」。七草粥1月7日に、今は亡き母が「♪七草なずな……(実はこの出だししか覚えていません)」と、わらべ歌のように口ずさみながら、春の七草をまな板に載せ包丁で刻んでいました。わが家では、塩味風のおかゆを焚き、その中に正月で残った餅を入れます。出来上がったら、その上に刻んだ春の七草を散らします。子どもの頃、「なんで嫌いな七草粥を食べなければいけないの」と母に言うと、「正月に食べ過ぎた胃を休めるために昔から食べられてきたの。そして1年間、健康でいられるの」と。七草粥のわらべ歌同様、60代以降の方はご存じだと思います。
七草粥セット
その七草とは…「セリ、ナズナ(ぺんぺん草)、ゴギョウ(母子草)、はこべら(はこべ)、仏の座、スズナ(蕪)、すずしろ(大根)これぞ七草」。今は年明けのスーパーマーケットで小さな竹籠等にパックされて売られています。七草の写真を紹介しましょう。全てネットからです。

セリセリ  ナズナナズナ  ゴギョウゴギョウ   ハコベハコベ

ホトケノザホトケノザ   スズナスズナ   スズシロスズシロ

「春の七草」を上鷺宮地区で見ることができるのはセリ以外の6種類でしょう。ナズナ=ぺんぺん草。ゴギョウ=母子草、ハコベ、ホトケノザ(黄色の小さな花が特徴)、スズナ=蕪、スズシロ=大根。上鷺宮地区で見ることのできないセリは、今や八百屋などの店先に乗る栽培もの。本来のセリは田んぼなど、水辺に多く群生しています。春の七草の中で特に食されるのはセリ。自然の中で採る田ぜりは売れられているものとは比較にならず香りが口に広がり、早春を代表する味わいある野草です。
正月に七草粥を食べる習慣は中国から伝来したようです。邪気を払うという考えです。これが古来の日本の七草(米、麦、アワ、ひえ、小豆等)であった穀物の豊穣を祈る年中行事と合体したようですね。どちらにしても奈良時代前後から、「春の七草」(=若菜)を食すことは吉兆の意味を感じたからでしょう。
このような背景を知ると、次の和歌がさらに味わい深くなるでしょう。

君がため 春の野に出でて 若菜摘む 我が衣手に 雪は降りつつ
光孝天皇「古今集」春・21   百人一首15
現代語訳(あなたのために、まだ寒さが残る初春の野原に出かけて若菜摘みました。それを食べると健康で長生きする、と言われる初春の若菜を。寒さを我慢して摘んでいると、いつの間にか、袖に雪が降りかかってきました。)

古人(いにしえびと)は自然を畏敬し、尊崇しながら年中行事の中にその恵みを取り入れて共に生きてきたのですね。上記の和歌は、雪が降り積む中で、愛しいあなたをひたすら思いながら若菜を摘む、という相聞歌の心情描写と、雪と若菜を詠み込む色彩的描写が見事に対比されている名歌でしょう。この若菜は春の七草のいずれかだと言われています。

ホトケノザ2[注]いにしえの春の七草では「ホトケノザ」は、上の写真=キク科(上記の小さな黄色い花)と、左写真=シソ科(ピンクの花の写真)とがあります。調べても、どちらがそれかはっきりしませんが、上の写真=黄花のホトケノザの若芽が食用になる、との資料がありましたので、今回はあえて黄色の花をホトケノザとしました。諸説あります。