zakuro1柘榴の花(上鷺宮2丁目、北原神社南付近)

 梅雨(年によって5月末に開花も)に似合う花々は紫陽花等いくつもありますが、その中で、あえて今回はザクロに焦点をあてました。「え?柘榴?」と思う方が多くいらっしゃるでしょう。 万緑(ばんりょく)の中、他の花のように目立つことも、話題になることも少ない花。
柘榴が日本の舞台に登場してくるのは、平安の時代(923年)という説もあるほど、比較的、新しい植物なんですね。 だから奈良時代の万葉集には載っていないのです。 しかし、「柘榴」をテーマにしたいくつかの文学作品があるので、それをご紹介しましょう。
 「紅一点(こういってん)」という語句はよく知られています。実はこの「紅」が「柘榴の花」のことなのです。 11世紀、中国の政治家、王安石の詩の一部に『万緑(ばんりょく)叢中(そうちゅう)紅一点』=「(訳)緑したたる中、ただ一輪、柘榴の赤い花が咲いていた」という一節があります。 そこから色の対比の見事さからくる「紅一点」という語句が世に知られるようになりました。 その後、今、広く知られている「多くの男性の中に、ただ一人女性が入る」という意味に転化しました。この詩から自分流に次のように考えてみました…
 『《万緑(緑一色)の中》圧倒的な一色に染まる(安易な雰囲気に流されること)ことなく、《柘榴の赤色》たとえ少数でも自分の考えをしっかり持つ重要性と、納得できなければ、自分の意見を発信する大切さと、さらに周囲はそれを尊重する寛容さ……』日本には難しいけれども、丁寧に育んでいかねばならない一つと、この詩から勝手に感じた次第です。「万緑叢中紅一点」等の古典の一節から、このように自由に自分なりの解釈をしてみるのも楽しいものです。
「柘榴」は小さな花なので見過ごすことが多いと思いますが、出会う機会があれば立ち止まって見てください。

 ここで「柘榴」を詠み込んだ短歌と俳句を紹介しましょう。

 柘榴の実 いまだ青しと 待ちしより 今日雨に濡るる 大き紅(くれない)  佐藤佐太郎

 鉢割れて 実をこぼしたる ザクロ哉                    正岡子規

 「柘榴」の原産地はトルコ、イラン東部か、南ヨーロッパと北アフリカ(旧カルタゴ)という説があります。 現在、日本の店先に並ぶ「柘榴」の輸入先はイラン、カリフォルニア産が多いとのこと。 柘榴の花言葉は優雅なやさしさ……もう一つ……「ザクロ」が歴史と深くかかわっているようです。 古代エジプト時代、古代ギリシャ、ローマの時代等には食用はもとより、薬用に、神話にと、様々な文化の発展に寄与したようです。 それほど当時から身近な植物だったのですね。当然、シルクロードを辿って中国、日本に伝わったのでしょう。「柘榴」は結構、人間の歴史に有用な植物だったようです。

zakuro2柘榴の実

(付録)
 柘榴は町内近辺を回っても「八成公園」を含め、ほんの4本程しか見つけられませんでした。 その中で、上鷺宮ではありませんが、町内で多くの方がご存じの新青梅街道と中杉通が交差する所にあるOKストア。 新青梅街道側、OKストアに接する細く小さな花壇に、まだ幼木の「柘榴」が植わり、梅雨の頃にはいくつかの赤い花と小さな実をつけます。機会があればご覧ください。

【文・写真】 戸引 一博