立春も過ぎ、暦の上では春になりました。私は春を探しに何回も上鷺宮地区をカメラ片手に徘徊しましたが、冬枯れの中、「東風(こち)未( いまだ)し」の感。春は遠かったです。新年から立春までに出会った春の花はいくつかありました。特に多く目にしたのは?梅(ろうばい)、早咲きの梅、寒椿、早咲きの木瓜(ぼけ)あたりでしょうか。これらの日本の代表的な春の花々は別の機会に紹介させていただきます。今回は上鷺宮でまさかの万葉植物に出会いました。紹介させていただきます。

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 それは上の写真の真弓の実です。1月は時期が遅すぎ、多くの実が、はぜてしまいました。上鷺宮4丁目にある「八成公園」内(上右写真)にひっそりと2本息づいていました。「八成」の紹介はNO1で触れましたが、かつては武蔵野そのものの雑木林が今や小さな公園に成り果てました。悲しい限りです。しかし、右の写真でお分かりのように楢(なら)椚(くぬぎ)の木々とも触れ合えます。秋には鉄砲どんぐり(先のとがったライフル弾のような形状)、オカメどんぐり(丸い飴玉のような形状)が拾えます(私が子供の頃、2種類のどんぐりのことをこのように呼びました。先端と反対の箇所に楊枝を刺し込みコマにして遊びました。時にはパチンコ弾として鳥を狙ったりと…)。

話を本題に戻しましょう。下の写真が「真弓の花と実」です。(これはネットからの写真です)

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万葉集の中に、この真弓を詠んだ作品が何首かあります。一首を紹介します。

 「 南淵の 細川山に立つ檀(まゆみ) 弓束(ゆづか)巻くまで 人に知らえじ 」
     巻7-1330 作者未詳

 真弓(檀)は落葉樹。開花:6~7月。結実:10~12月。昔はこの木を材料にして弓を作ったところから「弓」という字が付く。材質は硬く柔軟性がある。

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 〇現代語訳(南淵の 細川山に立っている真弓(檀)の木よ お前を立派な弓に仕上げ弓束を巻くまで その所在を人に知られたくないものだ )何だか、どうでもいいような分かりにくい訳ですね。
◎説明《南淵は奈良県明日香村稲渕の上流(飛鳥川の上流です)、細川山はその近くの山とされています。「弓束巻く」とは左手で弓を握りしめ る部分です。そこに樹皮や革を巻き付け握りやすくする、弓の仕上げの作業。》

●実は裏の意味が??!!裏の意味(ある時、男は山で立派な弓の材料になる真弓(檀)を見つけた。この木が立派に成長するまで誰に も 取られたくない=人に知られたくない。)と詠んだ歌。実は弓を女性に置き換えている……つまり「真弓を自分が見初めた女性にたとえ、妻にするまで 他の人にその存在が知られないように…」という気持ちがこもっている歌だとも言われています。

 真弓と出会った時「八成公園」で久しぶりに霜柱を踏みしめました。これがその時の写真です。この公園は細い道で南北に二分割され、北側の 公園にはイチジク、金柑、グレープフルーツ、琵琶、こぶし、胡桃、桜、はな桃、グミ、ムベ、梅等の木々もあります。特に南側の小さな公園は6,70年前 の八成山の様子が、ほんの少しわかります。楢、椚の木々から…………かつて、上鷺一帯に点在していた武蔵野の風情は楢、椚の落葉樹の雑木林が中心でした。今はこの八成公園に佇んでいると、風の声に往時の武蔵野の面影がしのばれます。

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【文・写真】 戸引 一博